労災保険 給付summary

労災保険といえば、万一の労働災害が発生した際に療養にかかる費用を補償してくれる制度ということはご存知ではないでしょうか。しかし、労災保険で受けられる補償が療養だけに限らないことは知らないという方もおられるかも知れません。
そこで、労災保険の給付の種類を並べてみますと、療養、休業、(長期の)傷病、障害、介護、遺族・葬祭、二次健康診断の各給付があります。各給付について、ごく簡単に説明します。
療養の給付は、労働災害が発生した場合に治療に必要な費用を面倒見ますよというもので、これが多くの方がイメージしている労災の給付です。治癒するまでが対象なのでその点は注意が必要です。
休業の給付は、業務上の傷病による療養のために労働ができない状態で仕事を休まざるを得ないという場合に支給されるものです。支給される額はおおよそ給与の8割ほどです。なお、休業3日目までは、待機期間という扱いで支給されません。この期間については、事業主が休業補償を支払う義務があります。
傷病の給付は、業務上の傷病で療養を開始してから1年6ヶ月を経過した場合に傷病が治癒していなくて、かつ省令で定められている障害等級に該当している場合に年金としてその支給要件が満たされている期間支給されます。これを傷病補償年金といいます。障害等級は1級〜3級までです。なお、傷病補償年金と休業の給付は併給はできません。
障害の給付は、治癒(症状固定)後に等級に該当する障害が残った場合に支給されます。障害等級は1級〜14級まであり、1級〜7級だと年金で、8級〜14級だと一時金で支給されます。
介護の給付は、傷病補償年金や障害補償年金を受ける権利がある場合で、特に1級〜2級に該当するような重い障害があることによって介護を常時または随時受ける場合に請求によって介護に要した費用をもとに支給されるものです。常時あるいは随時によって、それぞれに限度額があります。
業務上の傷病で、残念ながら命を落としてしまった場合の給付が遺族の給付と葬祭料です。遺族の給付は、法律で定められた受給権者がいる場合は年金で、いない場合は一時金で支給されます。葬祭料は、葬祭を行った者(通常は遺族)に支給されます。葬祭料の支給額も被災労働者の賃金額から算出されます。
これら労働災害が発生した後の給付以外に、脳血管疾患や心臓疾患、いわゆる過労死の発生を予防するための給付として二次健康診断等給付があります。定期的な一次検診で、血圧、血中脂質検査、血糖検査、腹囲の検査またはBMIの測定でいずれの項目も異常所見ありと診断された者が対象となります。更に踏み込んだ健診と、医師または保健師の保健指導が無料で受診できるというものです。
労災保険には、従業員を1人でも雇っている場合は、個人事業で常時5人未満を雇用している農林水産業の一部を除いて、加入が義務付けされていますので、労働者側は労災に加入していて当然といえます。なので労災=労働者のためのものというイメージが強いと思いますが、従業員を雇用している中小企業の事業主や、職種にもよりますが従業員のいない一人親方にも特別加入といって、労災に加入することができます。労災保険は、療養だけでなく、休業、障害、死亡など幅広く補償の対象としているにも関わらず、保険料は年金や健康保険のように高額ではありません。特別加入の場合で気をつけたいのが、給付の対象が従業員と同じような業務で起きた災害が対象であることと、二次検診等給付に関しては対象外だということです。現場で従業員とともに汗を流して業務に従事している事業主の方々には、特別加入を検討してみるのも良いのではないでしょうか。

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